確かに舞台としてはこぢんまりしてますが、名作だと思います。
ドイツがナチに傾倒する直前の、ギリギリの時代の話です。
オカルト劇場で左右にきれいに別れたドイツ民族とユダヤ。ユダヤに向かって喧嘩をふっかけ、罵詈雑言を浴びせるドイツ。それに対して余裕げに微笑むユダヤ人。
私たちはこの先の歴史を知っているために、このシーンには得体の知れない空虚さを覚えます。
ここから、どどっと時代は動き、第二次世界大戦になだれ込みますが、その直前の奇妙な静けさの中、ナチの台頭を予言する者と、ユダヤ人の危機を訴える者、何も信じない大衆。
大きな事件が起きるわけでもないのに、この何とも言えない切なさと、映像の素朴さを、バックで流れる音楽が増長します。
ティムロスの吸血鬼っぽさが良かったですし、ウドキアー氏もさすがの存在感。
主人公は演技素人だし、棒立ち感はありますが、そういう朴訥な役柄なので、そこまでは気にはならなかったです。