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狂熱の孤独のesのネタバレレビュー・内容・結末

狂熱の孤独(1953年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

サルトルがコロンビアピクチャーズの為に書いた映画脚本の一つである"チフス"からインスピレーションを受けた作品。

新型コロナウイルスの流行初期に1947年に出版されたカミュの『ペスト』がよく話題になったが、サルトルの"チフス"も同時期の1943-44年頃に執筆されている。
サルトルの脚本では舞台は英国領マラヤで、マレー人と英国人の社会的、経済的格差を本来は差別をしない筈のチフスの蔓延スピードの差などで描き出している。また金銭的な男女格差についても言及していて、現代に映画化しても通じる寧ろ今こそ映画化すべき脚本と言えるものだったが、今作ではサルトルの実存主義の片鱗が見え隠れするだけの全くの別物になっている。

舞台はメキシコ。16世紀に西洋人が持ち込みメキシコで流行した悪性伝染病を意識して現代に置き換え描いたと思われる。
心に傷を抱えた男と、心に傷を抱えることの出来なかった女が出会い再生していく物語。気品を失わないフランス人と無知で陽気な現地人という感じで、サルトルの脚本はカケラも感じさせない当時の欧米映画らしい描き方。どうしても比べてしまうので評価は下がる。

自戒として、本来の自分を捨てる為に酒に溺れ道化のように振る舞いながらも、医師という身分は捨てられるが人を助ける志は失う事ができないという葛藤を表現したジェラール・フィリップの演技は見応えがあった。
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