YasujiOshiba

マッチ売りの少女のYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

マッチ売りの少女(1928年製作の映画)
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U次。24-137。修復版。画質良し。音楽つき。

ただし、この音楽の出自がわからない。U-next 版にはクレジットが見当たらない。IMDB によると1931年版はマニュエル・ロザンタル(1904 - 2003)のクレジットがある。Dailymotion にアップされているものに確認できたけれど、その音楽は U-Next 版とは違う。はて?
(https://www.dailymotion.com/video/x85hh2z)

内容は面白い。セットの撮影だし、ミニュチュアの使い方がよい。インタータイトル(中間字幕)がほとんど必要ないくらいの映像。マッチ売りの少女を演じるのがカトリーヌ・ヘスリングだけど、ナナの演技よりはずいぶんまし。パンクロマチックで撮影しただけあって、表情の陰影がより滑らかになり、表現力がましている。

ヴィスコンティの作品ですぐに思い浮かぶのは『白夜』(1957)。これもスタジオにセットを作っての撮影で、霧が深い運河の街リヴォルノを描いていたけれど、雪のシーンもあった。ここにも雪がある。作り物だとわかるのだけれど、作り物のほうが寓話っぽさが出るというのもある。

死神が登場するのもすばらしい。なんだかベルイマンの『第七の封印』(1957)を思い出す。彼女を守ろうとする人形の騎士との空中騎馬戦は一見の価値あり。実験的なイメージなのだけれど、みごとにドラマをひきたてている。

そして少女は雪の中で息絶えることになるのだけれど、そのモンタージュがよい。十字架、横たわる少女、死神にまつわりつく彼女の髪、吹き払うと十字架にぶらさがり、その十字架は薔薇の木になり、つぼみをつけ、花を咲かせるのだけれど、次の瞬間、横たわる彼女の死に顔に花びらを散らしてゆく。その白い花びらが雪に変わる時、ああ、そうだった彼女はそうやって行ってしまうのだと思い出すことになる。見事。
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