拘泥

トム・ヤム・クン!の拘泥のレビュー・感想・評価

トム・ヤム・クン!(2005年製作の映画)
4.2
第一声象はどこだしか言わんトニー・ジャーがとにかくカス殺すなんてそれだけで面白いのは明らかですが、ではそれだけのバカ映画なのかといえばそうではない。
全てのファイトはしっかり血湧き肉躍り、一つミスすれば取り返しのつかない要素に満ちた長大なワンカットは言わずもがな映画史に残るくらいイカれ狂っているし、一方ネジが吹っ飛んだ緩急を持った編集もまたイカれ狂っている。
特にたまらないのが、ボートチェイス。あのスピード感でとりあえずやっときたいこと全部詰め込んだバカさ加減と、ヘリ爆破迄のあまりにも速すぎるカットの疾走感はたまらないのですが、ヘリ爆破さえも潔く切断してしまう手腕にはまことに恐れ入った。いやね、ボート突っ込ませてヘリを爆破させてそれを別視点からの3カットで観せるんですが、その間わずか3秒で一気にシドニーの夕焼け→ニュース番組による語りに移るんすわ。敵の最大兵器の爆破というある種のゴールでさえも疾走のうちに廃して、一瞬で場を物語りに移行する。これ実際観たら分かるけど本当やばいんですよ。クールダウンを与えずクールダウンが成されてるんで圧倒的に我々置き去られてしまう。この辺の美学マジたまんねえ美しさです。一流のアクションと撮影と編集を結集した非常に美学に満ちた作品であります。
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