猫脳髄

大鴉の猫脳髄のレビュー・感想・評価

大鴉(1935年製作の映画)
3.8
世間が紅白を楽しむ間に私は白黒ホラーということで、一連のモンスター作品人気が下火になってきたユニヴァーサルが手掛けたエドガー・アラン・ポーを下敷きにした翻案ホラーもの。

怪奇映画の2大スター、ボリス・カーロフとベラ・ルゴシの共演作品で、前作「黒猫」(1934)の時点から、キャリアでは後発のカーロフが主演格のルゴシよりも上席でクレジットされている。以降の共演作品でもこの格付けは変わらなかったそうだ。

ポー・マニアのマッド・ドクターであるルゴシが横恋慕したダンサーを奪うため、凶悪殺人犯のルゴシの弱みを握って、ダンサーの婚約者や父親を始末しようと画策する。マッド・ドクターに加え、ギミックだらけの屋敷(※)という大好物モティーフが散りばめられており、おそらくかなり贔屓目な評価となっていることは否めない。

一般的にルゴシの短所と評されるベタで大仰な芝居が本作のマッド・ドクターには合っており、なかなか見ない彼の満面の笑みも邪悪極まりなくてよい。ルゴシに弱みを握られたカーロフが、自分を取り囲む鏡に苦しみ破壊するシーンは劇的だが、本作での演技は「フランケンシュタイン」(1931)のそれに近く、ルゴシが一枚上手である。

※篠崎誠がいう「死の機械」(一度動き出したら血を見るまで止められない、ホラー映画に登場する機械描写)の初期の例だろう。ミシェル・カルージュの「独身者機械」のフレームも適用できそうだ。いずれにしてもホラー映画の死をもたらす機械のギミック群で論文が書けてしまう
猫脳髄

猫脳髄