猫脳髄

モルグ街の殺人の猫脳髄のレビュー・感想・評価

モルグ街の殺人(1932年製作の映画)
3.3
一連のモンスター作品人気が下火になってきたユニヴァーサルが手掛けたエドガー・アラン・ポーを下敷きにした翻案ホラーもの。「フランケンシュタイン」への出演を辞退した(がゆえにボリス・カーロフとの明暗が分かれてしまった)ベラ・ルゴシに補償的に割り当てた埋め草作品ではあった(※1)。

史上初の推理小説とされる「モルグ街の殺人」を翻案し、マッド・ドクターのルゴシが、ゴリラと人類の交配を達成しようと女性たちを次つぎに手をかけるという趣向で、ストーリーにさほどユニークな点は伺えない。

本作の特筆すべき点は演出面で、カメラワーク、編集はおそらく撮影のカール・フロイントのアイディアと思われるが、群衆の表情を素早いカットバックでつなげてみたり、ゴリラの描写をロングで着ぐるみ、クロースでアニマルアクター(といってもチンパンジーなのだが)に差し替えてみたり、またカメラの固定が当たり前だった時代にパンを多用して滑らかな演出を試みる。

このほか、表現主義的な映画美術や、ゴリラがヒロインを抱えて群種の頭上の屋根を走り回る演出は「キング・コング」(1932)の先取り(※2)など、映像演出の部分には注目すべき点が多い。

※1 監督のフローリーも「フランケンシュタイン」から差し替えられている
※2 ただし、本作や「キング・コング」における類人猿の暴走、禁断の交配というアイディア自体は、モキュメンタル・アドヴェンチャーの「インガギ」(ウィリアム・キャンベル、1930)の影響下にあるとされる
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