紅梅シュプレヒコール

ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還の紅梅シュプレヒコールのレビュー・感想・評価

4.0
指輪を葬るための長い旅も遂に今作で終着を迎える

3作の総作品時間は約9時間30分にも及び、なかなか気力的に堪える面もあったが鑑賞後の爽快感は素晴らしく、観て良かったと思えるシリーズだった

完結作ということもあり、盛り上がりは最高潮に達し、前2作までに温められた様々な種が一気に萌芽する

映像面での見所である冥王サイモンの軍勢との衝突は当時の技術で考えれば相当気合が入った映像で描かれ、今観ても十分鑑賞に耐えうる迫力ある物に仕上がっていた

絶望と希望が交差する中で、心折れずに立ち向かう兵士や民衆の姿には血が湧き立ち、昂揚を感じることが出来る

そして他方で展開されるフロドとサムの旅路はシリーズを経るごとに不安感は増していき、今作でも不吉な予感を常に纏わせる胸が騒つくものになっている

指輪の力に取り憑かれ、精神的に摩耗していくフロドを見るのは心苦しいが、そんなフロドを献身的に支えるサムの輝きはフロドだけでなく鑑賞者の救いにもなっている

前2作でも特に涙を誘われるのはフロドとサムの関係性に対してであったが、今作でも変わらず2人のやり取りには泣かせられた

作品を見終えた時に分かる今シリーズの真の主人公はサムだ

ただ話を盗み聞きしたがために同行することになった彼の冒険の始まりを思えば、小さな原因が大きな結果をもたらすという今シリーズの1つのメッセージを汲み取ることもできる

あまりの長尺さに忌避していたが、観てみれば傑作ファンタジーと呼ばれる理由がわかる素晴らしいシリーズであった(「ホビット」シリーズは小休止を得てから観ます)