ああああ

そして人生はつづくのああああのレビュー・感想・評価

そして人生はつづく(1992年製作の映画)
4.6
・1990年イラン北西部ルードバール地震、マグニチュード7.4。死者4万人、負傷者30万人、家を失った人たち50万人
・映像というものが結局のところ、恣意的に編集された情報の集積であるのならば、映画の中のフィクションとノンフィクションの区別はないのかもしれない。映像の中の被災地の風景は本物、演者も本当に現地の人かどうかは不明だが、当時のテヘラン周辺に甚大な被害を与えたという意味では全員が本物の被災者だ。

・この映画にはドキュメンタリーの恣意性に対して強い反発や皮肉がこもっていると思う。被災地を悲観的に映すことが優れたドキュメンタリーではないし、希望を描くことも違う。被災地があり、それを撮る人間がいるということ自体を強く意識させる作りは、それでもここで起こったことは嘘ではなく現実なんだということを、かえって強調しているように思った。

・自分自身、初めて東日本大震災の映像を見た時、あるいは被災者の辛い状況を映像で見たとき、あまりにも現実離れした映像に嘘っぽさを感じてしまった記憶がある。あのとき、これは現実なんですとどれほど強く映像で伝えようとしても、それをみている人には映像のショッキングさ以上のことが伝わってないのではないかと思った。実際自分は関西からどこか対岸の火事として東北及び関東の状況を見つめていた。

・主人公の親子はキアロスタミ親子の設定の親子であるが、被災者にどこか冷たく旅人のような態度を取り続ける。では、それを観ている観客である我々は過去の、そして異国の被災者に対してどういう眼差しを向けるか、それは結局のところ劇中の親子が被災者に向けているまなざしそのものなのではないかとも思う。

________________________

⚫︎余談
劇中で『友達の家はどこ?』のチラシが映るシーンがある。濱口竜介の『悪は存在しない』のタイトルにも引用されていたゴダールの『気狂いピエロ』のタイポグラフィがここでも引用されており、映画人にとってのある種の暗号のようなものなのかもと思った。
ああああ

ああああ