フレッド・ジンネマン監督の代表作の一つ。親友の女性二人の戦争直前の出来事をサスペンスタッチで描く。「噂の二人」(1961)の原作者で赤狩りブラックリストに記載された女性劇作家リリアン・ヘルマンの自伝の映画化。
老いた劇作家リリアン(ジェーン・フォンダ)は幼友だちジュリア(ヴァネッサ・レッドグレーヴ)を思い出していた。1910年代アメリカ、リリアンは富豪の娘ジュリアに憧れ混じりの親しみを抱きながら友情を育んでいった。やがて成長し別々の道を歩み始めた二人。劇作家を目指したリリアンは1934年に処女戯曲「子供の時間」で成功をおさめる。そんな折、ジュリアから「頼みごとがある」と連絡が届く。彼女はウイーンで反ナチ活動に身を投じており、その活動資金をベルリンに届けてほしいというのだが。。。
女性視点の戦争映画のように受け取った。山場となるのは、生命の危険を顧みず親友のためにベルリンに向かう列車の道中。始終、冷や汗を滲ませ続けるリリアンの姿が緊張感を呼び、ナチスの得体のしれない恐怖が身に迫って感じられた。
冒頭ナレーションに出てくる「ペンティメント(pentiment)」という言葉は、原作のタイトルでもある。言葉の意味は「絵画で、重ね塗りされたり修正されたりして見えなくなった元の画像が透けて見えるようになること」。本作は過ぎ去った思い出、特に戦争について、今あらためて見つめ直し綴っているように思う。原作者ヘルマンと強制収容所で両親を殺されたジンネマン監督の思いは同様だったのではないか。
ただし本作はワンテーマではなく、女性の友情にまつわるヒューマンドラマとしての側面も大きい。幅広い観方のできる秀作と言える。
※メリル・ストリープ(当時27歳)の映画デビュー作
※追記
ジュリアを演じたヴァネッサ・レッドグレーヴは本作で1978年アカデミー賞助演女優賞を受賞。しかし、彼女が前年にパレスチナ支援のテレビ・ドキュメンタリーを製作していたことから、ユダヤ防衛同盟がレッドグレーヴの人形を焼き授賞式会場で抗議の座り込みをした。レッドグレーヴは授賞スピーチで次のように述べた。
「この数週間シオニストのごろつきどもが行った様々な脅迫に屈せず、皆さんが一歩も退かなかったことは大変に立派なことだと思います。心から敬意を表します。彼らが行った行為は、ユダヤの人々がファシズムと圧政に対して長年戦ってきた英雄的な歴史に対する侮辱にほかなりません」。