BON

牢獄のBONのレビュー・感想・評価

牢獄(1949年製作の映画)
4.0
ベルイマンのキャリアの中で初めて脚本を手がけた初期作で、既に後年に続く神の不在、神への信仰、恋愛関係、生と死などのエッセンスや、実験性に富んだ幻想的な映像魔術が素晴らしい映画。

ストーリーは、主人公の映画監督が“地上の地獄”というテーマの映画化をする考察で脚本家のトーマスに相談したところ、トーマスが同じテーマであたためていた物語が映画内映画として突如始まるというメタ構造のストーリー。赤子を棄ててしまった17歳の娼婦ビルギッタと、トーマスの生活という2組の別々のカップルが直面している生の苦悩を描く。

煙草をふかして煙が立ち込める美しさ、映画内で死神が出てくるサイレントムービーや、ビルギッタの夢のシークエンスが素晴らしい。

両手で光る宝石、影の使い方、赤ん坊の浴槽のビルギッタのナイフの演出、『仮面/ペルソナ』(1966)で断片的に引用されたスラップスティック映画が観れて私は興奮しました。10年以上前から作られていたとは驚き。

私はベルイマンの作品群をざっくり3種類程に自分の中で分類しており、
『冬の光』『沈黙』などの神との対話タイプ、『夏の遊び』『不良少女モニカ』『鏡の中にある如く』などの青春が光るタイプ、そして『第七の封印』『仮面/ペルソナ』『狼の時刻』などの幻想実験タイプだが、(他にも結婚生活の破綻や反戦映画もまだまだあるが…。)、本作は紛れもなく幻想実験系で私の一番好きなタイプのベルイマンだった。

もう正直これは感覚で、人間の苦悩や容赦ない陰鬱さなど考察することが頭から吹き飛んで映像の面白さに夢中になってしまった。
BON

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