【地獄の映画をみせつける!】
クライテリオンからでているベルイマンほぼコンプリートBOXに収録されていない作品。TSUTAYA渋谷でVHSを借りようとしたのだが、借りられていたので、国立映画アーカイブの特集で鑑賞した。
脚本家が監督に「オモロイネタあるべ!」と言いよるところから物語は始まる。脚本家が話す映画の内容は、《地獄の映画》だった。
悪魔が世界征服し、原爆を禁じる、広島に原爆を落とした者を処刑する。あとは何もしないとのこと。
監督や役者は、「何もしないって幾ら何でも、、、」という。脚本家は、悪魔は善意でやっている。シンプルな程傑作になると語る。
この簡単に飲み込み辛い哲学を、劇中映画という形で魅せていく。赤ちゃんを棄てろと愛人に言われ従った女の地獄と無理心中未遂が原因で警察に追われた女の地獄が交差していく。
ベルイマンは演劇の拡張として映画を用い、映画の奥行きに人間の内なる世界を投影させる傾向があるが、初期の段階から技法が確立されていた。
赤ちゃんを棄てた女が見る悪夢。悪魔のような男が枯れ木の垣根をぬって追いかける。女は編み物している人に助けを求めようとするが、謎のガラスが阻む。ガラスを叩けど叩けど、編み物している人は気づかない。そして、逃げ惑う先にいるおっさんの元へ辿り着くと、彼はバスタブから赤ちゃんの人形を取り出し首をへし折ろうとする。しかし、ヘシ折られたのは、魚の首だった。
このシュールでキツイ悪夢の前に、長々とチャップリン(?)の抱腹絶倒なサイレント映画を魅せることで凶悪さが増幅される。
ベルイマンは最近町山さんの解説により、ホラー映画作家としての側面もしっかり認知されるようになったが、初期作からガッツリホラー、ホラーしていたとは驚きでした。
P.S.半額セールでベルイマンBOX買ったはいいが、どうやら在庫切れで入荷が2月下旬になるとのこと。ベルイマンマラソンを開始するのは暫く後になりそうだ。