ポルりん

金日成のパレード/東欧の見た“赤い王朝”のポルりんのレビュー・感想・評価

3.2
独裁体制特有の狂った美学を、まざまざと見せつけられる作品。

■ 概要

1989年にポーランドの映画スタッフによって製作された、北朝鮮の実態を映し出したドキュメンタリー。
88年9月9日、北朝鮮民主主義人民共和国の建国40周年記念式典に招待されたポーランド国営テレビ局のアンジェイ・フィディック監督らが、北朝鮮側から提供された資料や案内に一切の演出や主観も加えず、100万人が一糸乱れぬ壮大なパレードをそのまま撮影。
その映像から、指導者・金日成(キム・イルソン)を神格化する同国の社会の姿を、逆説的に明らかにしていく。


■ 感想

「ひるおび!」などでよく北朝鮮関連の話をピョンジンイルなどがするが、その人の話を聞くんだったら、本作を観た方が遥かに勉強になる。
歴史資料的にも貴重な映像だと思うし、何千人もの子供達によるマスゲームは、スケールが大きく鬼気迫る程の迫力がある。
そして何より、金日成の恐ろしい群衆操作や厚かましさには、目を疑うばかりだ。


民衆A「偉大なる首領様」

民衆B「親愛なる指導者同志」


人々は口を揃えてこれらの言葉を発する。
観光名所を案内する際も、


案内人「偉大なる首領様が子供の頃相撲を取っていた場所です。」

案内人「偉大なる首領様は道を行くおばあさんのために車をお止めになった。」

案内人「偉大なる首領様は朝早くから起きて作付けを指導される。」

案内人「親愛なる指導者同志は科学者達の難問を一瞬で解決される。」


などと、観光名所とは全く関係ない話をする。
厚かましいにもほどがある!!

このように、過酷な独裁体制を敷いている場合、画一的で整然とした陰影のない物を偏愛するような狂った美学に陥ってしまう。
これは右翼左翼関係なく、どちらでも必ず陥る。
それは、私が最も嫌悪感を抱くものである。

つい80年くらい前の日本もこれと同じ、いやある意味では北朝鮮以上に酷い状態だったと思うと恐ろしい。
そして悲しい事に、現在の日本国内にも、形は違えどこれとよく似た匂いの世界が存在する。

片方は歪んだ正義感、もう片方は被害妄想のみで敵対者を批判している。
考え方は正反対だが、根っこの部分はどちらも全く同じである。

似た者同士なんだから仲良くすればいいとは思うが、お互い思想が凝り固まっているので、反対意見を絶対に聞かない。
こういった考えは非常に危険である。


非常に刺激的で、観終わった後には頭がクラクラしてくるものの、嫌なものを通じて自分を発見する事が出来るので、一度くらいは観た方がいいのかもしれない。
ポルりん

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