馬刺し

ファイト・クラブの馬刺しのレビュー・感想・評価

ファイト・クラブ(1999年製作の映画)
4.3
「必死に生きる」この矛盾を孕んだ言葉はこの映画にぴったりだと思う。

将来に期待を持てずあらゆるストレスシャワーが降りかかる現代社会。社会的弱者は馬車馬のように誰かの奴隷となって働くしかない。そこに安らかな睡眠は存在しない。今日も地獄。明日も地獄。そんな連鎖的な地獄の日々が死ぬまで襲ってくる。そこでやっていくには心を。己を殺すしかない。もしくは自分より下のやつを見て安心するしかない。(相談会)

心は腹を空かしハエイナの如く心の拠り所を求める。それは下を見下ろすこと、所有欲を満たすこと、何かを好きなること、血を流すこと様々だ。でも根本は解決されていない。また明日はやってくる。「逃走か闘争か」。明日の地獄に向かって緊張する身体は常にストレス状態を引き起こし、やがては判断力さえも鈍らせる。

愛も平和もない坂道を転がるローリングストーン。この悪循環で人はダークサイドへ堕ちていく。
究極の自傷行為。彼は破滅的な生き方を愛していた。狂いに狂った日常は何が何だかわからないカオスな時間になる。その時間は理不尽な世界を一時的にシャットアウトさせてくれる。忘れさせてくれる。どうでも良くさせてくれる。そして逸脱した自分に酔いしれる。「俺はあいつらとは違う」

彼が目指したゴールは一体なんだったのか。それは自分が何かを成し遂げること、何者かになりたいということ、そして破滅だ。

狂ってるのは彼の頭か?それとも現代社会か?

デビットフィンチャーさんは「セブン」然り、救いのない映画を作るのがうまい。なんだかんだめっちゃロックな終わり方するし。演出やシナリオもかなり癖があってすごく面白い。140分という長さは全く感じない。

10年ぶりくらいに見たシリーズ。ほんとに内容全然覚えてなかった!面白かった!
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