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悪人のmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

悪人(2010年製作の映画)
3.8
朝日新聞に連載された吉田修一のベストセラー小説を李相日監督が映画化。
殺人事件を起こした若者と出会い系サイトで出会った女性の逃避行を描いたヒューマン・ドラマの秀作。
音楽は久石譲
主題歌は福原美穂「Your Story」

長崎の田舎で祖父母と暮らす孤独な若者、清水祐一27歳(妻夫木聡)は、出会い系サイトで知り合った福岡の保険外交員、石橋佳乃21歳 (満島ひかり)に会いに行くが、別な男のために約束を反古にされる。その上罵倒されたことから、彼女を絞め殺す。
その後、同じく出会い系でメールのやり取りだけだった佐賀の紳士服店の店員、馬込光代(深津絵里)と初めて会い、すぐに関係を持つ。
男は人を殺したことを打ち明け自首しようとするが、女は2人で逃げることを決意する…。

(他の登場人物)
①~加害者・清水祐一(妻夫木聡)の親族~
・母 (余貴美子):幼い祐一を棄てる。
・祖母(樹木希林):祐一を息子として育てる。悪徳業者に引っ掛かる。マスコミに追いかけ回される。
・祖父 (井川比佐志):ほぼ寝たきり。
・大叔父 (光石研):解体業者。祐一を働かせている。

②~被害者・石橋佳乃 (満島ひかり)の親族等~
・父(柄本明)と母 (宮崎美子):久留米市在住。夫婦で理容室を経営
・佳乃の同僚の外交員(中村絢香、韓英恵)
・軽薄な大学生、増尾(岡田将生):佳乃を車から蹴りだし、置き去りにする。
・増尾の友だち (永山絢斗):被害者の父と出会い心境が変化。

③~馬込光代(深津絵里)の親族~
・妹 (山田キヌヲ):光代とアパートで二人暮らし。彼氏が出入り。姉を見下している。

④~その他~
・バスの運転手(モロ師岡)
・タクシー運転手(でんでん)

「何か考えてみたら、私ってあの国道から全然離れんやったとね。
目の前に海のあったら、もうその先どこへも行かれんような気になるよ」

「あんた、大切な人はおるねん?
その人の幸せな様子を思うだけで、気分までうれしくなってくるような人は。
今の世の中、大切な人のおらん人が多すぎる。
自分には失うものがないちゅう思い込んで、それで強くなった気になっておる。自分は余裕のある人間と思い腐って、失ったり欲しがったりする人を馬鹿にした目でながめとる。そうじゃないとよ。
小さい人間は誰とよ」

「若か娘さん絞め殺して、人間のできることじゃなかですよ。
そうですよね。世間で言われよるとおりなんですよね。あの人は悪人なんですよね。人を殺したとですものね」

"灯台"
"レンチ"

交際相手も友だちもいない孤独な若い男女。主人公2人は、出会い系サイトを性的欲求というより心の繋がりを求めて利用しています。
ラスト…灯台の中での主人公(妻夫木)の行為はどのように考えたらよいのか考えてみましょう。
金髪の妻夫木聡は言葉少なく暗い性格の役を、深津絵里は異性と付き合ったことがない真面目な大人しい女性を、共にうまく演じています(特に深津絵里!)。
満島ひかりや柄本明など脇役も好演。
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