このレビューはネタバレを含みます
訪れるバーで、フェルディナンがビールを一気に2杯頼むシーン。
あれ、実は自分もよくやってるw
いやー、この作品も画の力に尽きると思う。あとは役者の演技くさくない所作。
メッセージ性は強いけれど、それは二の次で良いし、ポエムや哲学的な言い回しも意味が分かる必要なんてなくて、画をより魅力的にさせる調味料のようなものだと考えればちょうどいい。
でも色々と考えたくなるのがこの人の作品でもあってだね。
男はアルファロメオ、女は美肌と髪とランジェリー、ピエロは言葉と思考。
相変わらず男と女はすれ違うし、資本主義や商業主義のことが大嫌い。
未だ先鋭化はしていないものの、ベトナムの話題が散りばめられていて、アメリカに批判的な思想が随所に滲んでる。
資本主義という自分の外側から押し付けられたものに踊らされ、自分の五感や内なる対話から感じ取ったことを軽視しているパーティ参加者を、フェルディナンが見下していたのは明白。
「現代文明はヒップを重視」は、パワーワードですねw
言葉で考えるということは、自分の内面の深い部分に入り込んでいくことと同意なわけで、やはりゴダールは内側に人間性を求めていたのだと感じます。
フェルディナンはゴダールそのもの。
ゴダールは自分が敢えてピエロのようなポジションに存在しながら、商業的な成功に囚われずに自分の主張をしていこうと、この頃に考えていたのではないかと思う。
実際、このあたりからより強い作風に変わっていきますしね。
そして、物語の虚構性を示すためにフェルディナンやマリアンヌに第四の壁を破らせたんだろう。
個人的には、実際にアンナとあったようなことが投影されてるような気がしてならないw
「もっと自分の頭で考えて会話をしよう」
「私は感覚のままに行動したいの」
「…………。」
ダイナマイトを顔に巻いてジタバタしながら命を落とすのは、さすがに笑った。
映画史上、最も滑稽な自死シーンじゃないの。思えば、その前にも線路で電車に引かれようとしてグダグダしてたもんな……。
彼をダイナマイト爆死に追い込んだのはマリアンヌだったわけですが、彼女はフェルディナンと思想が合わず、金が無いところに愛想をつかしたんですよね。
だとすれば、マリアンヌは資本主義やアメリカの象徴的な存在として描かれていたということになるんでしょう。
こうして最終的にピエロだったことが露呈するフェルディナンだけど、マリアンヌはずっとピエロと呼んでいて、実はハナから種明かししてたというねw
「ピエロ!」「フェルディナンだ」は、このオチのための壮大なフリだったのか。
で、やっぱり言うよ。アンナ・カリーナ可愛すぎ。
特に船着き場のアンナよ。
船乗り帽子、赤いシャツ、スカイブルーのパンツ、ディレクター巻き。なんだあの可愛い生き物は。
他のゴダール作品の例に漏れず、色が印象的だった作品でしたが、
二人が纏う赤と青が物語の前後半で入れ替わっていくことで、立ち位置に影響を与えていくような演出は、ゴダール作品の中では意図が分かりやすくて、とても良かった。