るか

気狂いピエロのるかのレビュー・感想・評価

気狂いピエロ(1965年製作の映画)
4.1
ゴダール2作目。久々にしっかり頭使って映画を見た気がする。完璧に理解は出来なかったけど、まぁそんなもんで良いんじゃないかなと。ラストにかけては頭に大きなクエスチョンマークが浮かんだが、主人公はなんとなく「俗世」をバカにしながらもその俗世に観られることで価値の出るような小説を書き続けているある意味でのアーティフィシャルな「人間」でヒロインのアンナ・カリーナは作中でも言われているように思想とか価値合理的で偶発的なインスティンクトっぽい「ヒト」なんじゃないかな、と。オウムとキツネ(?)がそれぞれに当てはめられてることからもなんとなくそんな感じを見て取れる。そんな人生における境界線引き・せめぎ合いが根底にありつつ、カラーという新たな表現を獲た監督の素晴らしい色彩感覚にも惚れ惚れ。序盤のフィルター的な使い方だけでなく、個人的には差し色的な原色の使い方が素晴らしかった。単純にルックの話で言えばアンナ・カリーナがずっと綺麗で単純に眼福なのも良い。衣装もずっと可愛いしね。
あとはシンプルに現代ではもう見られないようなノマドロジックな逃避行が美しく見えて仕方なかったなぁ。車でスレ違いながらキスしたり、センスが好き。
今作の制作において即興がデフォだったのがアメリカン・ニューシネマへのアンチテーゼだったように作中でも「ニューヨークYEAH!! ハリウッド YEAH!! コミュニスト BAMG!!!」に始まりベトナム戦争への見方も観ていて興味深かった。同様の文脈で第四の壁をぶち破って語りかけられた時は思わず鳥肌が立った。

「新しい波」を意味するヌーヴェルヴァーグの代表作であり、一種のゴダールの集大成とも言って間違いないのではないだろうか。
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