けーはち

許されざる者のけーはちのレビュー・感想・評価

許されざる者(1992年製作の映画)
3.4
タイトルの「許されざる者」とは誰なのか?──かつて札付きの大悪党だった主人公は無論だが、街の治安を守るため余所者を吊し上げる暴君のような保安官も、酔って娼婦の顔を切りつけた牧童や、彼を匿う仲間も、彼らを私的に制裁するために報酬を出した娼婦たちも、事実を無視し煽情的な記事で儲ける物書きも、全員悪。

元より米大陸の開拓は原住民・黒人などを搾取した罪に罪を重ねた旅路。それを糊塗するように清廉な勧善懲悪冒険物語と成った西部劇は、イタリアにてマカロニ・ウェスタンというスパイシーなアンチヒーロー劇に姿を変え、その下で売れたイーストウッドが改めてアメリカの原罪を持つ許されざる人たちの、ある意味では救いを求めて苦悩する悲劇に紡ぎ直したのが本作だろう。そういった文脈を脇へ置くと、西部劇という娯楽の殿堂へ思索を持ち込んだがゆえに、どうにも煮え切らないグズグズとした印象にはなるが。