先日亡くなった西田敏行氏が金田一耕助を演じた本作。あまり評価されておらず、存在すら知らない人も多い。個人的にもあまり面白いとは思えない。公開された当時、テレビCMに原作者の横溝正史先生が登場し、自ら「この恐ろしい小説は映画にしたくなかった」と宣伝していた。それなら、しなければ良かったのに。監督はテレビドラマ「俺たちの…」シリーズでも知られる斎藤光正氏。いわば青春ドラマの巨匠とも言える監督で、半村良氏のSF小説「戦国自衛隊」を映画化し、見事に青春映画に仕上げた。しかし、本作ではそれがうまくいっていない。「戦国自衛隊」は脚本が、鎌田敏夫氏(男女7人も書いている)てあったのに対し、本作は「必殺シリーズ」などの脚本で知られる野上龍雄氏。しかも、原作は横溝作品の中でも特に陰惨な物語。だからこそ、金田一役に人懐っこい西田敏行氏を配したのだと思うが、あまりうまく機能していない。実はこの原作は、テレビの「横溝正史シリーズ」ですでに映像化されており、そちらの出来も良かったので、比較されてしまう一面もある。そして、ここが肝心。テレビでは描かれていたフルートをめぐるトリックが本作では完全に削除されていたこと。あれがなくては「笛を吹く悪魔」が誰なのかという謎が成立しない。つくづく残念に思う。