某テレビ局の長時間に及ぶ会見や、事の発端になった週刊誌の記事の修正。この世の人間関係は利害や欲望によって形成され、一番大切なはずの他人に対する思いやりは、いったいどこにいってしまったのか。そんな気持ちから、しばらくテレビや動画を見る気にもなれず、時を過ごしていた。
そんな時、Kindleで予約していた、問題の事件で被害を受けた当該女性とされる(これも言ってはいけないのかもしれないが)その人が上梓した書籍が届き、読んでみた。想像していた内容とは違い、彼女の輝いていた半生と無惨に奪われた人生の過酷さを知り、愕然とした。
しかし、彼女は勇気を振り絞って、前を向いて、懸命に生きている。すごいと思う。
そして、ある配信サイトを見ていると、おすすめの「前向きになれる映画」というカテゴリーのトップに出てきたのが本作である。
2017年のアメリカ映画。2012年に発表された小説を原作としている。
遺伝子疾患で他人とは異なる顔で生まれた少年オギーは27回の手術で自宅学習を余儀なくされていたが、両親は息子を外の世界へ送り出そうと決意し、オギーは小学5年生で学校に通うことになる。しかし、周囲からは好奇な目で見られ、イジメに遭い、心が折れそうになる。そんな時、理科の授業を通して同級生のジャックと仲良くなり、やがて親友になるが、ハロウィンの日、オギーはジャックが自分の悪口を言っているのを耳にする…。
その後、オギーは家族や先生、友達に支えられて(というよりも、彼が周囲の人々の心に影響を与え)物語は感動的なフィナーレを迎える。
校長先生が、いじめっ子の両親に告げる「オギーは見た目を変えることはできない。私たちが見る目を変えるべきだ」という言葉が胸に刺さる。最後のオギーの「僕は人と見た目が違う。でも、心の中をのぞいて見れば、みんな違うはずだ。みんな何かと闘っている。だから、みんなに拍手を贈ろう」…泣いた。「前向きになれる映画」という触れ込みは嘘ではなかった。
母親役のジュリア・ロバーツ、父親役のオーウェン・ウィルソン、その他の出演者も良かったが、少年オギーを演じたジェイコブ・トレンブレイが素晴らしい。
本作は批評家にも絶賛されたようだが、実際にオギーと同じ障害を抱える当事者からは「障害者が直面している過酷な現実を無視している」「感動ポルノだ」といった批判の声もあったらしい。しかし、本作を観た人の多くが、その後、心に僅かでも変化があれば、本作が作られた意味はあるはずだ。
同様に、上記で触れた女性の書籍についても、そう思う。頑張って生きている人に対して、応援の言葉以外に何があるというのだろう。