浅野公喜

男はつらいよ 寅次郎心の旅路の浅野公喜のレビュー・感想・評価

3.5
寅3がついにオーストリアはウィーンへ飛ぶ、平成になって初めての作品である第41作。平成&バブルの時代となり街歩く人達のヘアスタイルやファッションが変わっても相変わらず古き良き昭和の風情携える寅3の姿が面白かったりします。

ウィーンへ行くきっかけとなるアキラ・エモト演じるサラリーマンが自殺を試みようとしている所に今以上に稼げても「24時間働けますか」状態なバブル時代の闇を感じさせ、飛び込み自殺をとらやの面々にスプラッター的表現で嬉々と語る寅3の姿にはB級映画好きのキヨシ・アツミの素が垣間見えるかも(笑)。

情に厚い故、サラリーマンの彼についていく形でウィーンまで行くのは良いのですが到着後寅3は内向きでいつもの勢いが無くなり、サラリーマンともあまり行動しなければ現地の人々との交流も少なく、マドンナとなるケイコ・タケシタ演じるツアーガイドとは日本へ帰ることを促す役割を担う程度で思ったより存在感が希薄。

また、彼女と付き合うオーストリア人が空港まで追いかけてくるという同時期の日本のトレンディドラマ的終盤も、寅3がアクションを起こす側ではなくアプローチを受ける側に居るということもあってか寅3は単なる傍観者に過ぎず、どうせならマドンナとは別の場所でこのオーストリア人と寅3が知り合い、付き合ってる外国人の彼女が故郷へ帰るかもしれないと悩む彼に寅3が「男なら行動で示すんだよォ」と勇気付け行動させるも、最後にその相手がマドンナと知りトホホ・・的な流れなら現地の人との交流も描けるし寅3がもっと輝けた気がします。

不満ばかり書いてしまいましたが、「第三の男」のパロディが有ったり、ベンチで向こうのマダムと日本語しか話せなくても上手くコミュニケーションを取ったり、牧師に声を掛けたりホテルの部屋でカップヌードルをすする寅3の姿は色々ミスマッチな魅力が有りなんだかんだ観てて楽しいものでした。海外ロケ作品をもっと観たかったですね。
浅野公喜

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