お気に入りのTシャツに穴があいた。
この間買ったばかり、まだ3回しか着ていない。義務感に溺れたいちご狩りの日と、初老の運転する除雪機に轢かれた日と、今日だ。ふわっと空気を含み、サラッと涼しい、わたしのお気に入りTシャツ。
何でこんなことになったんだ。
オシャレ着洗いで優しく手洗いし、たっぷりの水でゆすいで、オシャレ着コースで脱水したのに。
ネットか！
ネットに入れなかったからか？
5分前に戻りたい。
悔しい。
悔しくてどうしようもない。
この悔しさを忘れるためには、ホラーを観るしかない。刺激で悲しみを葬るんだ。
ホラーマスターKUUさんからお勧めしていただいた映画を、ようやく観る時がキタ！安定安心のヘッドフォンを装着して、いざゆかん！
今回の主役はベリーショートのかわい子ちゃん。華奢な身体に大きなお目目、甘ったれな声までキュート。
いかん…
怖い…
怖すぎないか…？
もちろんスプラッター要素も怖い。でも、わたしにとって本当の恐怖はそこではない。話の通じなさそうな男の人が、じわりじわりと近づいてくる気味の悪さ、凌辱され小さなカミソリで切り刻まれてしまうのではないかという恐怖だ。
マジで怖い…！
いつの間にか、テレビから離れたソファの端に移動し、体は表面積を最大限に小さくするよう折り畳まっている。
怖い！そして寒い！
クーラーを消そうにも、リモコンはテレビの斜め上。近づきたくない。たまに体にかかる冷風にビクッとしながら、固まっている。
終わった…
怖かった…
クーラーを消しに行く。涙で前が見えない、手も足も震えている。
なんという満足感。
ホラーで泣くなんて。
ベッドに入る。
まだ怖い。
切り刻まれるかもしれない恐怖に震えている。
眠れない。
Tシャツなんて、どうでもいい。
