うかりシネマ

うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマーのうかりシネマのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

誰も気が付かないまま、同じ一日が繰り返されていた。
「亀に乗って行ったのが浦島太郎だけでなく村人全員だったらどうだったでしょうね」

ループに巻き込まれたのは学園祭を翌日に控えるあたるたち全員。同じ日を繰り返している違和感はあるが、それを定点で強調したりはしない。始点から物語が始まるわけでもなく、短い尺の中で既視感を与えない。
ループに巻き込まれた友引町の反転からループの原因の謎解きはスペクタクル。
押井守が使う“ダレ場”がそのまま物語のテーマに合致するのも面白い。
やがて物語は哲学を衒学的に語り、メタファーを孕んで終わっていく。

「人前」が視聴者/観客であるなら、キスを拒むのはまさしく“夢が覚める”から。
第一話を破壊してあり得ない台詞を言わせ、©︎マークのついた豚が世界をリセットしようとしても監督は繋ぎ直し、当の視聴者/観客もそれを望んでいる。

日常であるはずなのに幻想的な街並み、出口のない孤島と化した友引町、荒廃した街、連続する心象風景と、移り変わるシチュエーションも美しい。
冒頭の学園祭前夜のシーンは“おたく”的な引用に満ち、本編と共に後の創作者に影響を与えたのが分かる。