あひる

うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマーのあひるのレビュー・感想・評価

3.5
先日、母が亡くなった。数年前に父を亡くしたので、いよいよ両親ともにこの世にいなくなったわけだ。これはまあ覚悟していたことですが、今まで以上に頻繁に「家族」について考えさせられることになりました。

そういえば母は高橋留美子に似ていなくもなかった。それもちょっと関係してるかもしれないけど、今回はこれまで縁のなかったるーみっくワールド(もう誰も言ってない)に挑戦です。

アニメっていうと、僕なんかは「嫌オタク」(そういう価値観がかつてあった泣)の時代に青春時代を過ごしたのです。いま思うと狭い価値観でした。反省。そんなこともあり、ますます広がってゆくであろうアニメ漫画イラストレーションな時代を生き抜くためにも名作を見ておきたかったのです。今後は新海誠とかも見てゆく所存です。

ここまで前置きが必要なのもどうかと思うよね。でもね、これが90年代サブカル信者に必要な手順なんです。素直になれなくてごめん。

で、めっちゃおもしろかったです!

アニメを構成する要素には「キャラクター」「ストーリー」「ビジュアル表現」などそれぞれ独立した評価軸があると仮定した場合、実は私のような外側の人間はキャラばっかり見てしまうのですが、押井守ほどのクリエイティブの本懐を知る人間からしたらそんなのは演出にすぎない。本当に伝えたいのは「全体」なんですよね。きっと。そういう視点から見たら、公開された1984年当時、もうバッチリ新しかったのではないでしょうか。

「好きな人を好きでいるために、俺は自由でいたい。」このセリフには驚きました。無償の愛が欲しいという超わがままなんだけど、本質的な欲求ですよね。僕には好きな人がいるのですか、ああ俺は独善的な愛情で相手の自由を侵犯してしまっているなあ…とこれまた反省いたしました。

気づきがたくさんあって嬉しかったです。母の訃報から6時間後、僕は『ブルー・ベルベット』と本作を見ました。直感で選んだ2本でしたが、どちらも「夢」「うつつ」がテーマですよね。肉親が亡くなった超センシティブな心理状態に、意識あるクリエイティブをインストールする。これは人生を使った壮大な人体実験でもあります。その結果、僕にどんな化学変化が起こるのでしょうか?未来が少し楽しみになりました。ママ、ありがとう!
あひる

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