平田一

ジュブナイルの平田一のレビュー・感想・評価

ジュブナイル(2000年製作の映画)
3.8
映画としては荒削りで、名作とは言えないけれど、この映画にしか出せない魅力がたくさんありました。

米アカデミー賞視覚効果賞を受賞、世界中でも大絶賛に包まれた傑作映画『ゴジラ -1.0』を手掛けた山崎貴監督の、記念すべき長編映画監督デビュー作にして、(当時販売されたものを除く)DVDも配信もされていない、今や貴重というしかないSF映画。違法配信とかじゃなく、中古ショップでお金を貯めて、ようやっと購入できた、念願の鑑賞です!

少年時代に遭遇した未来をかけた夏休み、“ジュブナイル”の経験が紡ぐ未来の物語。

ドラえもんとか色んな話で語られてきた題材を、アニメじゃなくてまさかの実写、しかも当時の日本映画でこれほどまで描いてくれた…ムッチャスゴいことですよ!

ハリウッドと比べたら、CGは丸分かり。戦闘シーンではどうしても劣るところはありました。けれど敵対する存在、ボイド星人のCGはクリアだったら面白くもなかったものだと思います。ハリウッドレベルならグロテスクな外見かもしれなかったと思うんです。それだと敵なのに冷酷になりきれない愛嬌や日本ならではのアプローチにならなかった気がするし、あれこそが理想的なデザインだと思います。

あと、テトラはどこまでがVFXキャラなのか、等身大で作られたプロップなのかも分からなく、久しぶりに映画の魔法というのを味わえましたね。特撮技術で名を上げて、VFXも身につけて、少しずつハリウッドの二番煎じから脱皮…今年ゴジラが視覚効果賞を取ったことからも、国内の技術の歴史を見ているようで感慨です。

それと忘れちゃいけないけれど、ストーリーも良かったです。ものスッゴく王道なストーリーではあるんですが、ただ王道の展開をなぞっているわけじゃなく、随所にこの映画だから語れる話を見せていて、初恋や冒険がどれも瑞々しいんです。少年時代のユースケとミサキちゃんの初恋、ユースケやトシヤ、ヒデタカの三人の友情や、ユースケたちに協力する物理学者の神崎のキャラクターが皆応援したくなるほど、愛らしいものでした。しかも劇中で神崎を演じている香取さんの肩の力が入っていないお芝居も良かったです。

まとめると、何でこれBlu-ray(もとい豪華版DVD、Blu-ray)出てないの? って、絶版が勿体ない作品の一つです。ゴジラが米アカデミー賞を見事受賞したんだし、これを機に再販をしましょうよ、関係各所!
平田一

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