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ローズマリーの赤ちゃんのpsychedeliaのネタバレレビュー・内容・結末

ローズマリーの赤ちゃん(1968年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

恥ずかしながらロマン・ポランスキーの作品はこれしか観ていないのです。
70年代のオカルトブームの先駆のような作品だが,所謂オカルト御三家の『エクソシスト』『オーメン』『ヘルハウス』とはまた違ったテイストを持っている。『エクソシスト』が色でいえば赤を基調とし,汗がだらだらと流れるような暑苦しさ(尤も,『エクソシスト』が何時の季節の物語であったか覚えていないのだが)を描写することに力点を置いていたのとは対照的に,本作は真夏の出来事と言及される箇所でも意図的にまるで冬のような寒しげな画作りが強調されている。色でいえば白,白妙。これには驚いた。まるで正反対だもんね。
演出的にも,『エクソシスト』がねっちょりとぐっちょりと撮ったのに比べ,本作はもっとドライに,白骨を冷たい素手で触れられるような,それによって罅がぴしりぴしりと走るような感覚。今まで観てきた恐怖映画の中でも,これほど効果的な映画表現を体現した作品は他に観たことがない。
先の御三家でもそうなんだが,オカルト映画の傑作と云われる作品の殆どが所謂イタリアンホラーやハマーの作品と違って,視覚的恐怖の露出が少ない。御三家の中でも一番評価の低い『ヘルハウス』が特に露悪的ともいえるような直接的恐怖趣味に徹していた。やはり見世物は藝術にとして認められにくいのだろうか。
本作は元々ウィリアム・キャッスルがメガホンを取る予定だったらしいが,周りが反対してポランスキーに役がまわってきたらしい。しかし,私としてはキャッスルが撮っても面白かったのではないかと思う。私は見世物映画が大好きな人間なので,御三家他のオカルト映画の中でも『ヘルハウス』が大好きなのである。
とはいえ,本作はそういう好みを越えたところに凄味のある作品。演出他含め完成度は超一流でも楽しめない作品というのは沢山あるが(このレビューサイトに書いた物では『隠し砦の三悪人』)本作の凄味はそんな恣意的な意見を遥かに凌駕してくるところにある。日に日に窶れ,痩せ細っていく主人公,不安を煽るカメラワーク,幻想的な夢の風景。これら映画効果に感銘を受けぬものは居るまい。
納得いかぬ部分は多い。悪魔とか神とか,日本人の私にはどうにも理解しにくい部分も多い。日本の怪談映画だと悪魔が栄えたためしがないし,そもそも田宮伊右衛門(漢字合ってる?)とか,悪魔的な登場人物が多すぎてお岩さんを恐れるよりむしろ加勢しちゃうくらいだからね。霊的な悪魔というやつにイマイチ馴染がない。私としては映画における悪魔ってのは,『大殺陣』や『十三人の刺客』における陰気なカタルシス,観客と画面との大きな温度差,その隙間にこそ悪魔が潜むのだと思っている。
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