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ローズマリーの赤ちゃんのrage30のネタバレレビュー・内容・結末

ローズマリーの赤ちゃん(1968年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

序盤は、引越し先で起こる隣人とのトラブルが軽快に描かれ、ある種のホームコメディー感すら漂う軽快なタッチで始まる本作。

しかし、主人公の妊娠をキッカケに、パラノイアなスリラーへと様変わりしていく…。
妊娠した女性が抱える潜在的な不安や恐怖、その苦悩を誰にも理解されない孤独やストレスといったものを、悪魔崇拝者による陰謀を疑う主人公に象徴させているのが面白い。

それ以降は「悪魔崇拝者の罠か?」、それとも「主人公の被害妄想か?」というサスペンスが続く。
本作が秀逸なのは、この揺さぶりで観客をとことん追い詰めていくところだろう。
子供を出産したところで一安心かと思いきや、そこから最後の揺さぶりが待っている。

「主人公の被害妄想か?」という読みは、観客的には「そうであって欲しい」という逃げ道の1つであり、その可能性があるからこそ、どこか安心して見る事が出来ていた。

ところが、最後にその一縷の望みは打ち砕かれてしまうのである。
その観客側の絶望と、映画内の主人公の絶望がリンクする瞬間が、たまらなく恐ろしい。
全身が震え上がる…身の毛もよだつとは、まさにこの事だろう。

直接的な恐怖描写ではなく、作品の構造だけでここまで恐怖を与えられるというのは衝撃的な経験だった。
「この手の映画は曖昧なまま終わるのだろう…」と高を括ってしまう、映画を見慣れた人ほど、この衝撃は大きいかもしれない。

ジャンル的にはホラーだが、超一流のサスペンスでもあり、そして、妊婦が抱える苦悩を描いた普遍的なドラマでもある。
妊娠を経験する事のない男性にとっては、妊婦への理解を助ける作品にもなるだろう。
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