Kirisshy88

恐怖のKirisshy88のレビュー・感想・評価

恐怖(2009年製作の映画)
1.2
学生時代、卒業制作や論文で壮大なテーマを掲げすぎて、あるいは風呂敷を広げ過ぎて、あるいは人の意見に左右されすぎて消化不良の未完に終わった人たちを思い出す。

この映画は、ほんらい生の源とされる「光」を「恐怖」に位置付け、「死/生」について「視覚を封じるというテーマのもとで視覚性の強い映画(媒体)で描く」という難題に挑んで横滑りして失敗したといことらしい。

まず映画のテーマとシナリオ上、核となるはずの光の描写が昔の子供用の週間戦隊ドラマレベルで煩雑。象徴的光の登場の流れ、タイミングも効果的ではない。最後の方の光の正体露見にいたっては稚拙極まりない。この光の描写こそがこの映画の肝であったはずである。

他に家族観・スプラッター・医学サイエンス・ミステリー・パニック・ゴースト・サイバーパンクなど、マインドマップを広げ過ぎて、どれも深みや精度がなく半端で本題が描けていない。変にサイエンスミステリー仕立てにせずに、映像詩にすればよかったのではないだろうか?映像詩は優れた感性が必要なので、徹底して凝ったシナリオで精緻にサイエンス・ミステリーを描いた方がよかったのではないか。とにかく余計な要素が多いように感じた。
また時間不足に思えるわりには、音響や演技演出、メイクなどがとにかく過剰で不自然。監督以外のお偉いさんの意見を入れ過ぎたのだろうか?「光の恐怖」を描くはずが「麻酔なしで髪の毛生えたままの雑な外科手術は怖いかも」というような、力の入れ所が完全に間違っているように感じられた。出演者たちだけが勝手に大袈裟にパニックって恐怖に陥っていたようだが、一体、鑑賞者はどうすればいいのだろう・・・

黒沢清『CURE』『回路』がいかに優れていたかが良く分かる。
Kirisshy88

Kirisshy88