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ロスト・ハイウェイのfilmoutのレビュー・感想・評価

ロスト・ハイウェイ(1997年製作の映画)
3.8
22年ぶりくらいに見たかもしれない。
初見ではインダストリアルノイズロックとこの乖離した精神異常的な世界に喰らってサントラを買って延々と聴いていた。
その後ラムシュタインにまでハマってしまった。マリリン・マンソンには全くハマらず。

やっぱりリンチのやっていることはあんまり変わってないなという印象で、ツイン・ピークスもリミテッドまで合わせて結構これに近い。
黒髪とブロンドの対比、ファム・ファタール、カフカ的不条理なイメージ、フランシス・ベーコンとか、他のどのリンチ作品よりも好きなものを断片的に詰め込んだ感じ。
常に漂っている微量なノイズに加えてそれを増幅させるかのようなインダストリアルノイズ。
あと映画監督には脚フェチが多い気がするが、実はリンチは結構乳が好きという感じがする。ツイン・ピークスがそもそもそういう意味だし。それにしてもパトリシア・アークエットがあんなに脱いでるのも異常だなと思う。
また『ロスト・ハイウェイ』というタイトルはリンチのことだから『失われた週末(The Lost Weekend)』か?と思ったがこれは関係ないみたい。とは言え後者も幻覚におびえるアルコール依存症の男の恐怖と苦悶を描いた作品で、単純にノワールジャンルはハードボイルド系だけじゃなく精神異常とも親和性が高いと言える。

田舎に住んでいた時は車で峠を走っているとほとんどこのオープニングクレジットのシーンと同じで、こんなにブレてはいないが巨大な鹿が出てきてギョッとしたりたぬきが前を疾走して轢きそうになったり意外に現実も異様である。

俯瞰的に見ると上記のお気に入りモチーフに加えて現実逃避の話を土台としてオープンにポルノとかスナッフムービーなどの18禁まで盛り込んでるという感じがしないでもない。
伏線回収なんて自作自演の予定調和なんだからしなくていい。

あと “心因性記憶喪失”または“解離性遁走”とかよく言われるネタバレ的な要素はリンチ作品のシュルレアリスムなアート性を軽減する残念な捉え方でしかないのでしなくていいと思う。
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