にこ

お早ようのにこのレビュー・感想・評価

お早よう(1959年製作の映画)
4.0
小津映画にハマって毎週のようにみております。
ほとんどが娘の嫁入りだったりをテーマにしているなんとも哀愁を感じる作品ばかり撮ってる監督だと思っていたのですが、本作のお早うはまるで渡鬼のようなホームドラマコメディ。
古い作品ながらよく笑わせてくれる小ネタ満載で、オールウェイズ三丁目よりノルタルジーを感じる(そら作り物でなくその時代リアルタイムに撮られている映画だから当たり前だけど笑)。

ストーリーはいたってシンプルで、主役は子供二人。
テレビがほしくて親にせがむも、そんなもの必要ない!と突っぱねられ、余計なことを言い過ぎる!少し黙っとけ!!と怒られて、意地になって外でも中でもしゃべらないというストライキを起こす、というもの。

タイトルにもなっている「お早う」。
「お早う」「今日は」「いいお天気ですね」「ごきげんよう」
子供にとってはこの大人の挨拶だって余計なことじゃないかと反論。
でも、子供たちの英語の先生は、「それが世の中の潤滑油になるんだぞ、まだ子供たちにはわからないか」、なんて言うのが印象的だが、
本作がそんな潤滑油になるあたたかい様だけを映しているわけではないのが面白くて、
まず、ご近所付き合いの様子。
毎朝奥様同士みんなで「お早う」「今日は」と挨拶を交わし、世間話や噂話しを繰り広げ、あらぬ勘違いがどんどん広まっていき、潤滑油どころか火種になってるという皮肉な点。
そしてラスト、「無駄は世の中の潤滑油だ」と言った先生の想い人との「お早う」「いいお天気ですね」という会話。
潤滑油どころか今一歩踏み込めない壁を自ら作ってしまっているんだから仕方がないのがまた皮肉。

そしてなにより、本作の良さは子供たちにある。
子供が本当に子供らしい。
現代の子役はちょっと、子供“らしさ”を演じてる感が否めないのだが、お早うの子供は子供が演じてる、これなんだ。
そんな拙い演技が子供らしさをむしろ引き出して可愛くて仕方ない。
勇ちゃん、めっちゃかわいいんですよほんと。
見たらわかる、めっちゃかわいい。

子供たちの自在に操るおなら、
いつもそれで漏らしちゃう子、
おならすると何か様ですか、と来る奥さん、
言葉をしゃべらない子供たちのジェスチャー、
杉村春子とそのばあちゃんの強烈さ、
勇ちゃんのアイラブユー、
いつも同じ服の二人、
しょんべんしてそのまま手を洗わず手で食う飯、
たんまサイン、
やさしいお父さんばかりやっていた笠智衆の波平ばりの怖さ、
チャイムもなく勝手に扉を開けて入ってくる人たち、
1億総白痴化、

やっぱり小津映画は映画館でなくて、家で家族と笑いながら言葉を交わしながらみるのがベストですね!
にこ

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