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ウォータームーンのdaiyuukiのレビュー・感想・評価

ウォータームーン(1989年製作の映画)
3.0
1956年、長野県X地点に謎の光が夜の闇を裂いて天空より降りた。一部マスコミは謎の物体と報じたが、政府調査隊は巨大な隕石の落下とだけ発表した。そして1989年、ある山寺の秋、禅の修行に励む若き僧・竜雲(長渕剛)の体に異変が起こり始めていた。そんな時、竜雲は東京に出た。人間的な感情などなくなってしまった都会に竜雲は“あたり前の人間”を探しに出たのだった。その頃、国家公安部調査官が竜雲を追っていた。竜雲は“R”というコードネームで国家の最重要機密事項として扱われていたのだった。突然、ストリートギャングに襲われて負傷した竜雲は、旅館で女中をしている盲目の女、鹿野子(松坂慶子)に助けられた。そんな鹿野子に惹かれてゆく竜雲。しかし、異星人である竜雲には血液交換のタイムリミットが迫っていた。鹿野子と共に旅立つ竜雲だったが遂に力尽きてしまい、国家公安部の奥野に捕まってしまう。国家R機関のオペレーションルームに連れ込まれた竜雲は鹿野子を求めて力ずくで脱出をはかった。そして、生命を賭けて鹿野子を探し求めるのだった。
「オルゴール」に続き長渕剛が原案を担当した問題作。
「オルゴール」のヒットに気を良くした長渕剛が、「星から来た男が、当たり前の人間の生き方をしている男を探す」ストーリーの原案を書き、脚本家丸山昇一が脚本にまとめたことが始まりだった。だが原案者として並々ならぬ意気込みで映画製作に挑む長渕剛は工藤監督やスタッフと馴れ合わぬためか、同じホテルに泊まらず、工藤監督に無断でリハーサルや演技指導して、工藤監督がOK出しているのに長渕は撮り直しを要求したり、現場で長渕が勝手にアドリブしたり演技指導することに松坂慶子が嫌悪を露にして降板を申し出るなど、長渕剛と工藤監督たちの軋轢は頂点に達し長渕もスタッフに真意を伝えるために直筆の手紙を書き軋轢を回避しようとするが、工藤監督が降板して長渕剛が原案通りの形に完成させるというゴタゴタがあった。
龍雲が宇宙人であることの必然性、盲目の鹿野子と龍雲のラブストーリーや龍雲が探し求める「当たり前な人間の生き方をしている男」を探すロードムービーのくだりが中途半端になっていることなど、欠点が目立つけど、長渕剛演じる龍雲と萩原聖人演じる智念の友情は「オルゴール」や「とんぼ」で描かれる男の絆のような感じだし、弱い奴に愚痴を吐くサラリーマンやサバイバルゲームをやる奴を通して現代社会に生きる人間の人の感情に共感出来ない病んだ部分の描き方、長渕剛の格闘アクションなど惜しい部分があり、映画製作の共犯者になれる黒土三男となら脚本の練り上げが充分だったろうしヒューマンドラマとSFの噛み合わせも良くなっていただろうと惜しい仕上がりのヒューマンアクション映画。
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