笑いどころの多いコメディだけれど、キャストも撮影も、総じて淡々と真顔であることが、なんとも上等。
褪色したカラー写真のような色彩の、漁村と海と空の、朝な夕なの美しさ、意外と抑制的な音楽、天国の住人のようにトンチンカンな村人たち。なにより、中心になる三人の俳優がとてもいい(彼らのスーツもいい)。
このハッピーエンドを感傷的だという人は、砂浜に村人が集まってくる場面の怖さや、神のような会長の人格の浅薄さを確認してほしい。そして、主人公の、感傷的になる権利すら与えられない薄ーい悲しみを、悲しんでほしい。
夢のような映画。タイトルは、原題も、これなかなかの皮肉。