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紅夢のプレコップのレビュー・感想・評価

紅夢(1991年製作の映画)
4.9
ランタンは消えず

今年1発目の「死ぬまでに観たい」映画。【張芸諜 チャン・イーモウ 艶やかなる紅の世界】の特集上映で映画館で観た。映像美とストーリーの面白さが両立された素晴らしい作品だった。

財産家の第4夫人となったコン・リー演じる頌蓮が主人・陣佐千と他の夫人をめぐるドロドロとした愛憎劇に巻き込まれていく。主人が一晩過ごす院に赤い提灯が灯り、華やかになる。上からのアングルでこの赤提灯のある/なしが強調されるカットではあまりに冷たく(精神的に)苛酷な宮殿の印象が強まる。小津のように部屋や門の先を遠くから映して人間模様を交錯させていくのが見応えもあって素晴らしい。

第3夫人・梅珊の華やかさが映画的に映えており、歌唱のシーンや麻雀に興じるシーンなどで醸し出される独特な雰囲気が印象に残る。また、老いた第1夫人(妻)の存在感がほぼないのもまたリアル。

「赤」にこだわった画面作りで、事件のきっかけもすべて「赤」と演出と脚本が共に一貫した色彩美学を貫いたことで唯一無二の強烈な痛ましさと閉鎖性が感じられる逸品。

(余談)浜ちゃんバリの声量で「〇〇、点灯〜!!!」と叫ぶあのシーンはマネしたくなる。
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