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悪魔のような女のakrutmのレビュー・感想・評価

悪魔のような女(1996年製作の映画)
2.5
ピッツバーグ郊外の男子校を舞台に、校長とその妻である女性教師そして彼の愛人である女性教師の3人をめぐる殺人事件を描いた、ジェレマイア・S・チェチック監督のサイコ・スリラー映画。本作は1955年の同名フランス映画のリメイクであり、そのリメイク元の映画は、ボワロー=ナルスジャックというフランスの作家二人による推理小説が元になっている。ただし1955年版は原作の内容を大きく翻案していて、本作も1955年版を基本的に踏襲している。

アンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督による1955年版は、谷崎潤一郎が気に入って『過酸化マンガン水の夢』の中で内容を詳細に(ネタバレまでして)述べていたり、この小説の映画化を考えていたヒッチコック監督がボワロー=ナルスジャックに新たな小説を依頼し、『めまい』として結実したりと、フレンチ・フィルム・ノワールとして非常に高い評価を受けている。

一方で、リメイク版の本作はフィルム・ノワールとしての良さがほとんど失われていて、チープなサスペンス映画に堕してしまっている。監督の手腕の違いと言えばそれまでだが、結末の改変やその演出の悪さが特にひどい。また、二人の女性が共謀して校長である男性を殺害するという導入部分の見せ方もひどい。シャロン・ストーン演じる女教師が愛人である校長を殺人する動機がまったく不明だし、校長の妻と共謀するようなシーンもなく、いきなりよくわからないままに殺害するという展開に、鑑賞者はついていけなくなってしまう。さらに悪いことに、このような見せ方が後半を台無しにしてしまうのである。1955年版よりも原作に忠実にしている部分(二人の女性の関係)もあるが、その描き方もとても中途半端。高飛車なおばさんにしか見えないシャロン・ストーンの演技もイマイチ。

(個人的な)唯一の救いは、ヤバヤバではない普通の(さらにか弱き)女性を演じているイザベル・アジャーニの美しさだろう。それにしても、イザベル・アジャーニを起用した理由もよくわからないが。せっかく彼女を起用したのであれば、(イザベル・アジャーニが演じる)妻も実はヤバヤバであるというような翻案を考えたほうがよかったのではないだろうか。
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