HAYATO

友だちのうちはどこ?のHAYATOのネタバレレビュー・内容・結末

友だちのうちはどこ?(1987年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

2024年187本目
ノートを返したい少年の大冒険
巨匠・アッバス・キアロスタミの名を世界に知らしめたイラン映画
イラン北部にあるコケール村の小学校。モハマッドは宿題をノートではなく紙に書いてきたために先生からきつく叱られ、「今度同じことをしたら退学だ」と告げられる。しかし、隣の席に座るアハマッドが、間違ってモハマッドのノートを持ち帰ってしまう。ノートがないとモハマッドが退学になると焦ったアハマッドは、ノートを返すために彼の家を探し回るが、なかなか見つけることができず……。
本作において「子どもが主人公」になったのはイランの歴史的背景も影響しているようで、イラン革命以降の厳しい検閲や文化的制約から逃れるためにあえて子どもの物語を描いたそうだ。社会主義国家や独裁国家では度々そうした厳しい検閲が行われているが、本作も『不思議惑星キン・ザ・ザ』のように様々なメタファーや社会風刺が込められているのだろう。
子ども映画と言っても「ほのぼの」する作風ではない。主人公・アハマッドが生きるのは、実に過酷な日常だ。周囲の大人たちは子どもたちの言葉に全く聞く耳を持たない。ヒステリックに叱る母親、煙草を買いに行かせる祖父、問いかけを無視するドア屋など、アハマッドがまるで存在していないかのような彼らの態度は、あまりにも理不尽で胸を締め付けられる。
それでもひたすらに頑張るアハマッド。彼の表情からは常に「不安」が感じられるのだが、なんとかベストを尽くそうとする彼を応援せずにはいられない。結局その日にノートを返せなかったのは残念だが、普遍的な家族愛を感じさせる終盤の演出に心温まり、翌日学校で無事にノートを返すことができて心底ホッとした。
本作に登場する人物たちは実際に村に住む人々で演技は未経験だそうだが、信じられないほどナチュラルでリアリティがあった。
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