れもん

映画ドラえもん のび太の恐竜2006のれもんのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

2006年公開の『ドラえもん』の映画シリーズ26作目(「第2期」1作目)で、1作目『のび太の恐竜』のリメイク作品である。

自称「大山のぶ代過激派」なので「第2期」の作品を観るかどうかは少し迷ったが、観ないままでは好きか嫌いか良いか悪いかを語ることもできないと思い、恐る恐る鑑賞してみた。笑

結果、意外と違和感は無かった。
2005年に『ドラえもん』が「第2期」になって以降、テレビアニメも映画シリーズもまともに観たことが無かったけど、「第1期」と変わらず「国民的アニメ」であり続けた「第2期」は普通に生活していればいろんな場面で目にする機会があったので、いつのまにか耐性というか慣れが生じていたのかもしれない。

今作では作画が大幅に変わり、従来のアニメらしい均一な線ではなく漫画のような強弱のある線で描かれていた。
鑑賞後、今作の作画監督が『ホーホケキョ となりの山田くん』や『かぐや姫の物語』で作画監督を務めた小西賢一だったと知って、納得した。
ちなみに、24作目『のび太とふしぎ風使い』や25作目『のび太のワンニャン時空伝』で総作画監督を務めていた渡辺歩は今作では監督と脚本を務めている。

そして、やはり一番変化を感じたのはキャラクターたちの声。
特に、ドラえもん、のび太、しずかはかなりの変化を感じた。
しかし、前述のように自分にある程度の耐性や慣れが生じていたことや、声だけでなく作画が大幅に変化していることでもはや「第1期」とは別モノ感があり、意外とこれはこれで受け入れられるなと思う自分がいた。

ただ、スネ夫のママがスネ夫のことを「スネちゃま」ではなく「スネ夫」と呼んだことには強烈な違和感があった。笑
そして、のび太のママは完全に葛城ミサト。

一応鑑賞後に1作目のストーリーを大雑把に確認してみたが、ストーリーに関して大幅な変化はなかったと思う。
しかし、細かい部分では変化している部分もあったので、特に気になった部分を挙げてみる。

卵を温めるのび太にのび太のパパが話しかけるシーンは、1作目ではギャグっぽいシーンだったが、今作では親子の絆を感じさせるようなシーンになっていた。
のび太のパパが自分の少年時代を語り、のび太の態度も軟化していた。
個人的にはこれは良い変化だと感じた。

ピー助が公園の池にいることが世間にバレそうになるくだりでは、1作目ではただ噂が広まるだけだったのが、今作ではそれだけでなく大量の報道陣や捜索隊が押し寄せるという演出に変わっていた。
この変化によって、非日常感や緊迫感が増してストーリーにメリハリがついたとは思ったが、あれだけの報道陣や捜索隊が押し寄せてのび太がスモールライトで小さくする前にピー助が捕まっていないのはリアリティが無いとも感じた。
そもそも、1作目もそうだけど、スモールライトがあるならピー助を小さくして家で飼っておけば良かったし、もっと言えばビッグライトがあるならわざわざピー助が大きくなるまで育てなくても良かったよね。

ドラえもん、のび太、しずか、ジャイアン、スネ夫が、恐竜ハンターにピー助を渡して現代へ送り届けてもらう取引をするかどうか話し合うシーンは、1作目では「ピー助は殺されるわけではなく金持ちに飼われるだけなので取引をしてもいいのではないか」という意見を出すのはジャイアンとスネ夫の二人だったのに対し、今作ではスネ夫の一人だけになっていた。
恐らくジャイアンにアツいセリフを言わせたり見せ場を作るためだったと思うが、この時点ではタイムパトロールの存在も知らず、あんなに簡単に「1億年後にのび太の机が置かれることになる場所」が見つかることもわかっていないわけで、正論を述べるスネ夫が悪者のように描かれた挙句同調圧力に屈する様はあまりに不憫であった。
まあ、スネ夫が不憫なのは今作だけの問題ではないけど。

また、ドラえもんたちが現代へ帰るラストシーンも変化しており、1作目ではタイムパトロールに助けられ帰っていたのが、今作ではタイムパトロールと別れ自分たちだけで帰っていた。
これは渡辺歩監督のこだわりだったらしいが、個人的には無くていい変化だと感じた。
わざわざ自力で帰ろうとするドラえもんたちの行動原理も、タイムマシンが壊れた子供たちを現代へ送り届けずに去るタイムパトロールの行動原理も謎すぎるからだ。
ひみつ道具も無しに「1億年後にのび太の机が置かれることになる場所」が見つかる理由も謎だったし、かなりご都合主義だと感じた。
それに、タイムマシンに乗り込んで現代へ帰るシーンがピー助との別れのシーンと重なったことで尺が必要だったのかもしれないが、タイムマシンが時空間ではなくその場で浮かんだり空を飛んだりする演出も謎だった。

リメイク作品に変化はつきものなので変化があったこと自体に不満はないが、言わせたいセリフや描きたいシーンのために何かが犠牲になるのはあまり好ましくないと思った。

しかし、1作目と比較すれば全体的にクオリティの高い作品であることは間違いない。

【2022.08.15.鑑賞】
【2022.08.16.レビュー編集】
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