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古井戸のsonozyのレビュー・感想・評価

古井戸(1987年製作の映画)
4.0
ウー・ティエンミン監督による同名小説の映画化。
主人公にふさわしい男優が見つからず、第二カメラマンだったチャン・イーモウを主演に抜擢したという作品。

東京国際映画祭: グランプリ・国際映画批評家賞特別賞・最優秀主演男優賞

山西省太行山の山奥の村「老井(古井戸村)」。
水のないこの村では、何十年もの間、村人たちが井戸をいくつも掘り続けてきたが、すべて水のない空井戸ばかり。
水は雨水や雪を解かして使ったり、10km先からバケツを担いで来なくてはならない。

2人の爺さん(1人は昔井戸工事で閉じ込められ狂ってしまった)・父・弟と暮らす極貧の旺泉(チャン・イーモウ)は、大学受験に失敗し戻ってきた巧英(リャン・ユイチン)と恋仲だった。

しかし旺泉の知らぬ間に、父と爺さんは、金銭面から子持ちの未亡人 喜鳳(ルー・リーピン)に婿入りさせることを決めており、旺泉は家を守るため渋々結婚し、子供も授かる。
しかし、旺泉と巧英の互いの愛は消えず、三角関係的な感情がうごめく。

井戸工事中の父の爆死、井戸の権利を巡る隣村との抗争(多数の村人たちの流血乱闘)...過酷な日々が続く。

そして、20年間井戸掘りに捧げてきた村の支部書記が辞める前に、井戸を1つでいいから掘り当てたいとの意志を受けた3人、旺泉と巧英、仲間の旺才らは命がけで井戸掘りに臨むが、崩落事故が起きてしまう。

生き埋めとなった旺才は死亡してしまうが、旺泉と巧英は地中のその状況下で、初めて結ばれ、生き残る。

果たして旺泉は、この村のために、井戸を掘り当てることはできるのか・・

小説が元なので、寓話のようにも見えますが、中国の大西北高原に暮らす人々は、実際にこのように井戸を掘り続けてきた歴史があるようです。

厳しい自然環境のロケーション、村人たちキャストのリアリティが素晴らしい。
三島由紀夫似のスリムマッチョなチャン・イーモウの、俳優ではないからこその、ややぎこちなさも含むフレッシュな演技が良かった。
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