いずぼぺ

ミリオンダラー・ベイビーのいずぼぺのレビュー・感想・評価

ミリオンダラー・ベイビー(2004年製作の映画)
4.0
モ・クシュラ

ジャケットだけ見て、ボクシング映画なんだと思ってた。
ボクシングはたしかにボクシングなんだ。
これから調子が上がっていくボクサー、年増の貧乏白人女子ボクサー、109試合目で失明したボクサー、弱い相手にだけ勝つボクサー、ボコボコにされて立ち直れないかと思ったけど、また立ち上がったボクサー。
戦い方って、生き様だ。
人は生まれる場所もタイミングも自分では選べない。でも、どう生きるのかは選ぶことができる。全力で自らの生きる意味に邁進すれば、ありたい自分の姿にたどり着き、その中に魂を込めていくしかない。

イーストウッド監督の作品には時折、神父の姿がある。真面目な神父様から肩の力の抜けた神父様まで。今回の神父様はなかなかイラチだね。三位一体の話とか無原罪の御宿りの話とかを投げやりに説明して去っていく。
うまく説明できないけど、このあたりのやり取りが後半のダンの骨格なんじゃないかと思ってる。(まだ未消化)

人が生まれつきそれぞれ持っているものは尊厳である。そのそれぞれの尊厳は死してなお護られるべきものである。
その尊厳を護るのは、神なのか他のものなのか。
血は水よりも濃いのか、それとも共に流した血と涙のほうが濃いのか。
生きることの意味もまた人それぞれ。
自分の業、他人のための業。
でもやっぱり人は一人で生まれてきて、独りで旅立っていく。
重く人間の業を切り取った名作だ。
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