DaiOnojima

死刑台のメロディのDaiOnojimaのレビュー・感想・評価

死刑台のメロディ(1971年製作の映画)
-
 久々に再見。配信では出てないのでDVDレンタルで。おととい書いた通り、エンニオ・モリコーネの作品で一番印象深いのは、この映画の主題歌であるジョーン・バエズ歌唱の「勝利への賛歌」。



 1920年のアメリカで起こったイタリア系移民の冤罪事件を扱ったもので、素晴らしい傑作なんだけど、とにかく重く暗く、救いがない映画という印象だった。なので学生時代に見て以来、どうしても再見する気にならず、たぶん見たのは40年以上ぶり。久々に見て、傑作、名作という評価を変える必要はないと思ったが、やはり重い。

 アメリカを舞台にした映画なのに、登場人物は全員イタリア語で喋っているという不自然さは当然指摘されるだろうけど、イタリアフランスの合作映画ということを考えれば、おそらく第一義的にイタリア人に見せるために創った映画で、アメリカ人に見せることを想定してないんだろう。イタリア人よ、アメリカは過去にこんな最悪の人種差別をやっていたんだぞ、それを忘れるな、という呼びかけだ。1970年の製作時点でも既に50年も前の事件だから、アメリカ側に協力を拒まれたのかもしれない。アメリカにとっても忘れたい、そして実際に忘れられていたであろう事件を題材にしたこんな映画が作られたのは、世界的に学生運動や公民権運動、反政府革命運動、反米帝国主義運動が燃えさかった時期だったことも大いに関係していると思う。あえてアメリカ人のバエズに主題歌を歌わせたのは、この事件を世界中に知らしめたい、過去のものにしない、という制作者の思いだ。

 見るのにエネルギーは必要だし、動きの少ない法廷劇なので地味だが、一旦見始めると一瞬たりとも目を離せない。あまりの理不尽さに怒りがふつふつと湧いてくるが、冤罪で死刑にされた2人の態度が立派で、最後の演説場面など素晴らしい。そして最後に歌われるバエズの澄んだ美しい、祈りのような歌声は、いつまでも耳に残って離れない。モリコーネにしては異色の作風で、シンプルな繰り返しの多い曲だけど、映画とマッチしている。素晴らしく感動的な名曲だと思う。

 今のBLM運動の盛り上がりとも遠い話ではないと思う。ネットフリックスでリメイクしたらどうか。(2020/7/10記)
DaiOnojima

DaiOnojima