ユースケ

ディレクターズカット ブレードランナー 最終版のユースケのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

ワーナー・ブラザーズによって半強制的に追加された説明不足を補うためのデッカード(ハリソン・フォード)のナレーションとハッピーエンド化するためのエピローグ。【オリジナル公開版】と【完全版】はリドリー・スコットの納得のいく作品ではなかった。

1991年、ワーナー・ブラザーズから編集権を譲渡されたリドリー・スコットはデッカードのナレーションとエピローグを削除し、デッカードがユニコーンの白昼夢を見るシーンとデッカードの目が赤く光るシーンを追加し、自分の意図を忠実に再現した編集を行った。
これによって、ガフ(エドワード・ジェームズ・オルモス)がデッカードにユニコーンの折り紙を残すシーンに、ガフはデッカードしか知りようがないユニコーンの白昼夢を知っていた=ユニコーンの白昼夢は刷り込まれた記憶という新たな解釈が生まれ、デッカード=レプリカントが強調されたバージョン【ディレクターズ・カット/最終版】が生まれたのだった。

穿った見方になってしまいますが、デッカードをレプリカントだと仮定すると、本作の物語は人間よりも人間らしくをモットーとするタイレル博士(ジョー・ターケル)がレプリカント(ニセモノ)から人間(ホンモノ)を創り出すために仕組んだ計画だったと考えられないだろうか?
レプリカント狩りによってデッカードをロイ・バッティ(ルトガー・ハウアー)との対決へと導き、ロイ・バッティの死によってデッカードに自分自身の正体とタイレル博士の計画を理解させ、レイチェル(ショーン・ヤング)とつがいになり、子孫を残す選択をさせる。人間とレプリカントの違いは誕生に人間が関わっているか否かだけなので、レプリカント同士の意思によって生まれたそれは完全な人間だとタイレル博士は考えたのではないだろうか?
そう考えるとオープニングに登場するクローズアップされた瞳の持ち主は、デッカードを監視するタイレル博士に思えてならなくなります。

リドリー・スコットはデッカード=レプリカントに肯定的でしたが、デッカードを演じたハリソン・フォードもロイ・バッティを演じたルトガー・ハウアーも否定的だったそうです。
たった二つのシーンが追加されただけで、新たな解釈が生まれ、新たな読み方が可能になる作品。これこそが、【ブレードランナー】がカルト映画たる所以なのだと思います。