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心の指紋のgenarowlandsのレビュー・感想・評価

心の指紋(1996年製作の映画)
4.1
マイケル・チミノ監督の最後の作品。 末期ガンの殺人犯の少年が担当医を拉致して逃亡するアクションロードムービー。容易くバディものにはならないところがいい。脅されながらも治療しながらも、犯罪を重ねながらも、医師は、奇跡の山を目指すネイティブの少年に連れられていく。葛藤を抱えた医師が自身に向き合い少年に癒されていく「神話」でもあった。

ネイティブアメリカンの少年(ジョン・セダ)は治療を拒み、大自然による癒しを求めていた。
エリート医師(ウディ・ハレルソン)は末期の少年を苦しみから医療で助けたい気持ちと自身の秘密の間で苦悩する。


とてもアメリカを感じました。

ダイナミックで緻密、暴力と安らぎが同居し、寛容なヒューマニズムを感じます。少年は貧困で粗暴な環境に育ち社会の縁にいるが、ネイティブであり、広大な大地に守られている。スピリチュアルを信じない合理的な医師との対比で、魂の救済と身体の救済、精神と物質、どちらも大切なのに、分断されてしまった社会をも描いていました。

ナバホ自治区の壮大な景色に圧倒されます。CGかと思うような荒野に突然出現する切り立った火山シップロック(平地から500m高さ)。思わずGoogle Earthで調べてさらに感動。ナバホの人々の聖地。奇跡の山にしか見えません。

マイケル・チミノ監督の作品は大自然とともにあり、人間の存在を超えた何か見えない大きな精神を感じるところに惹かれます。「ディア・ハンター」でも鹿に象徴されていました。本作の後、長編作品を20年後77歳で亡くなるまで制作していません。天才だと感じます。「天国の門」いつか観たいと思っています。
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