つかれぐま

ジャッキー・ブラウンのつかれぐまのレビュー・感想・評価

ジャッキー・ブラウン(1997年製作の映画)
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タランティーノ全作レビュー完
僅か10本だからあっさり達成

レザボアやパルプに通底していた、かつてのBムービーへのオマージュ。今作は、実際にその世界のど真ん中にいたパム・グリア姐さんを招聘。さぞや、はっちゃけた作品になるかと思えば、描かれたのは・・。

70年代のブラックプロイテーション映画で大暴れ。若き日のタランティーノが夢中になったパム・グリア。今作の彼女は銃を手にはするが、引鉄に指を掛けるまでで終わる。中年になった彼女に対してとても忠実に、最大限の敬意を持って作られたタランティーノからのファンレター映画だった。タランティーノらしいポップさを封印した演出は、彼の作品群とは一線を画す手つきだ。この辺、本作が比較的不人気な理由かも。

前二作には出演していたタランティーノ自身は、今作に登場しない。その代わりが保釈金業者のマックスだ。彼とジャッキーの関係こそが、タランティーノから一回り年上のパム・グリアへの熱い想いを代弁する。「貴女はもうアクションは無理かもしれないが、それでも素敵な女性に変わりはない」

豪華な男性俳優陣を脇に回らせて、最後にセンターに立つのはくたびれた中年の女と男。アクション、グロ、ポップに乏しくても、やはりこれはタランティーノ印。本作で封印したこれらの要素は次作『キルビル』で大爆発する。あのユマ・サーマンへの過酷な要求も、パム・グリアのスピリットを求めた結果なのだろう。