成熟した映画愛とパッション
今作は、タランティーノの作風では1番落ち着いた印象を受ける。
ストーリー進行も緩やかで、初期2作のような雰囲気への期待に沿うものではないかもしれない。
しかしそのアダルティックな雰囲気が何とも心地よい。
草臥れた中年に、タランティーノがサントラとストーリーで彩りを与える。
後半の畳み掛けたストーリー展開もさることながら全体の雰囲気を支えていたのは落ち着きのある俳優陣の演技だった。
例えば車のキーを落とす描写であったりと日常の一コマをもお洒落に演出する。
これが才能なのだと感じる。
しかしまあ本当に映画作家の名がふさわしい監督だと思う。
セリフの一字一句にハズレがない。
言葉を大切に扱われている感覚。嬉しい。
文学と映画、そして音楽を愛する人間としては、この上ない喜びである。
切なさが残るラストに、思わずため息が。
おや、自分、まだまだ若いのに。