イチロヲ

ミッションのイチロヲのレビュー・感想・評価

ミッション(1986年製作の映画)
4.0
パラグアイ国境付近で布教活動を続けているイエズス会の宣教師が、奴隷制に苦しめられている先住民族を教化していく。18世紀のスペイン・ポルトガル情勢を背景にしながら、先住民族迫害とイエズス会追放事件を綴っている、ヒューマン・ドラマ。

前半部は、崖の上の集落に教会を建てようとする宣教師の物語。「伝道のためならば、命懸けのサバイバルも厭わない」という、キリストに隷属しているマゾヒストのようになっているところが面白い。宣教師に対する人間観察が止まらなくなる。

後半部に入ると、植民地支配のことしか考えていない権力者が登場。国家、聖職者、土着民のあいだで軋轢が生じて、阿鼻叫喚の地獄絵図へと発展する。宗教家の「布教活動=侵略行為」を暗示させながら、人の世の種々相を描いていく。

本物の先住民族を起用しながら、ジャングルでロケ撮影しているため、ヤコペッティ作品を彷彿とさせるドキュメンタリー性が備わっている。元奴隷商人(デ・ニーロ)が先住民族を護るための闘いに身を投じていくシークエンスが熱すぎる。
イチロヲ

イチロヲ