デニロ

お嬢さん乾杯!のデニロのレビュー・感想・評価

お嬢さん乾杯!(1949年製作の映画)
3.5
佐野周二と佐田啓二は兄弟であると思い込んで観ていたら、だって佐田啓二は佐野周二のことをアニキと呼んでいたんですもん、中盤で、佐野周二がお前を浮浪者の中から拾ってせめて一人前にしたいと思っていた云々と佐田啓二に説教するに及んで、違う兄貴だったんだと気付く。

道理で佐野周二、自身は女性に興味はなく、ショパンに涙し、佐田啓二が踊り子と一緒になりたいと言えば烈火のごとく怒りだす、成程、美形の佐田啓二を浮浪者の中から選択したのはそういう理由であったか、というような背景に気付いてしまうとその後の原節子との不自然なドタバタが意味不明でなくなる。

それにしても原節子。俯き加減で応対し、時には大きな瞳をクリクリと動かしながら婉曲的に男を口説く手管を見せる。この女本当は金目ではなかろうか、いや、本心から金だ、と見せる。と見せながら、おなか減った、と呟くくらい男からの誘いを無下にし焦らせるなんだかよく判らない不思議な役を演じている。それもこれも女は金、男は擬装、利害の一致。

佐野周二が買ってきたショパンのレコードを、あんたに惚れて買ってきたんだよ、と村瀬幸子は原節子に叫ぶけど、ショパンの音楽に感応した佐野周二の思いを解っていないんじゃなかろうか。

というような話なのだろうか。

1949年製作。脚本新藤兼人。監督木下恵介。かなり潰れた映像、音声でした。

神保町シアター 生誕110年 映画俳優・佐野周二 にて
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