MakotoKobori

グッド・ウィル・ハンティング/旅立ちのMakotoKoboriのネタバレレビュー・内容・結末

4.6

このレビューはネタバレを含みます

天才的な数学の才能を持つが、精神面に問題を抱える青年が
心優しく真摯な心理学教授・数学の天才教授・才能ある女性・悪仲間の親友との衝突や対話を通じて心の成長を描く物語


才能を持て余す主人公をどうにか数学の道に進ませたい数学教授
主人公の精神的成長を重んじて、選択を尊重させようとする心理学教授
圧倒的な才能に惹かれ、愛し合いを望む女性
旧知の仲であり、ずっと一緒にバカをし続けたいという思いを抱えながらも主人公が羽ばたくことを真に望む親友

圧倒的な才能を目の前にした人間たちが
それぞれの立場から主人公と向き合う群像劇でもある


男性陣の気持ちはみなよく理解できる

才能を目の前にしたとき
ある人は、自分のモノにしたがる
ある人は、才能に関わらず人として自由に生きて欲しいと願う
ある人は、才能を活かせと言う

才能とは光であり、近づけば自分の後ろに影を落とすことになる

それでもエゴイスティックに手に入れようとするのか
それともさらに光るために薪をくべようとするのか
それは人の性質が見える瞬間であり
人間の深い部分を描写するファクターとしてとても機能していた


ヒューマンドラマは感情移入をさせてなんぼであり
感情移入させるために、色んな立場の人間・醜さを見せるのが1つの方法である




序破急の三幕構成は


誰しもの目を引く数学解読事件
権威性をチラつかせる数学教授
優しすぎて生徒を叱れない心理学教授
心理学教授の心を初手で引き裂く洞察力を見せる主人公
積極的なムーブで女性を口説きにかかる親友
一緒にいた男を論破してコケにし、頭の回転力や知識量と主に悪ガキな様子を見せる主人公

それらの登場人物の性質が際立つようなエピソード(特にいい表面的に良く見える性質)をそれぞれの登場シーン
全てを糸を撚るように巧妙に絡めていく



主人公と仲を深めていく女性、主人公の代わりに面接でかます親友、ぶつかり合う教授など
人物の人間性や関係値が出るようなシーンが多数出現し
関係値もどんどん変化していく

そして
もちろん主人公の状況や心情も変化する
最初は教授たちの話を全く取り持たなかったが、心理学教授の熱心で真摯なアプローチに心を開き始める
また、彼女と愛し合うも、自身の心の傷から愛し切れない様子も見せる



1番心に残ったシーンは
才能を持つが心の拠り所がない主人公に対して、心理学教授が「君は悪くない」と、何度も何度も話しかけるシーン
主人公は最初は冗談交じりに躱し、あまりにしつこいので跳ね除けるも、最後には心を溶かし、泣いて心を開く

幼少期に愛を理解できなかった人間にとって、このアプローチはとても効く...
近づけば近づくほどに「これ以上は触れて欲しくない」と願うが
その実、自分の芯に巣食う弱さを知られたくないだけであり
本当は認めて欲しい、許して欲しいのである...

現実世界で心を溶かしてくれる人間に出会えるかはかなり運によるとは思ってしまうが
才能は才能を惹きつけるモノのように思うので
その才能を尖らせ、伸ばすほどに、救いの手が差し伸べられる可能性は高くなるのかもしれない


長くなったが
急ではそんな、心の防壁を溶かしてくれる人間の大切さが描かれている




誰しも心に傷を抱えているものである
だがそれを曝け出せて、支え合える人と出会い、関係を深められれば、それは途方もない幸せなのだと思う。
MakotoKobori

MakotoKobori