キェシロフスキがドキュメントとフィクションの狭間で試行錯誤していた頃の中編。
共産党から除名された男の諮問の模様を描いた作品です。
議論する人々の横顔をカメラは覗き見るようにキョロキョロと首を振って映し出します。
会話の応酬をカメラ位置を変えることもなく、クローズアップでひたすら撮り続けており、画的に退屈でした。
ラストで男の経歴をスライドショー的に見せるのも、政治的情勢の移ろいによって翻弄される悲哀や虚しさを表現するにしては芸がなかった気がします。

キェシロフスキのドキュメンタリーは、「煉瓦工」も本作も、一日の記録なのに、被写体のこれまでの人生を回顧させ、行く末も予想させる。
男は党の地方委員会に出頭、党除名の決定を不服としての聴聞会だ。彼のこれまでの不始末が露わにされ、最後には、結論まで協力せよと言われる。うつろな表情。彼の思い出の写真。彼のこれからは困難だろうと予測させ、終わる。

1982年 1月30日 都久志会館
併映：煉瓦工ほか5本
現代ポーランド記録映画祭