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ドラッグストア・カウボーイの4423のレビュー・感想・評価

5.0
素晴らしかった…。何を今さら…という感じだが、ガス・ヴァン・サントはやはりすごい。

薬が切れたらドラッグストアを襲い、その日暮らしをするジャンキーたちの世界をサントは繊細かつシャープな映像で映し出している。同時にドラッグの魅力と恐ろしさ、相反する事情を中間の立場から捉える。それはあたかも俯瞰で彼らだけの世界を覗いているようであった。

物語の中盤、度重なるアクシデントからその日暮らしの生活に疲れ果てた主人公ボブはサナトリウムへの入所を決意する。俺は生きたいというメッセージがボブを演じたマット・ディロンにどうしても重なってしまう。何故なら80年代後半はディロンが低迷していた時期。本作でのヨゴレ役は今後のキャリアを左右する捨て身の覚悟で臨んだ役だったのではないのかと私は思うのである。故にマット・ディロンの最高傑作ともとれるだろう。

そしてヤク漬けの人間にこんなにも魅力を感じることもなかなかないこと。どこか影のある雰囲気も良かった。第一にひねくれた私はヤク漬けの人間が更正してもどうせまた手を出すのでしょう…?とどこか冷ややかな目で見てしまうのだが、このボブはどこかが違った。誰にも邪魔されずに慎ましやかな生活を送って欲しいと願ってしまうのだ。これは一重にマット・ディロン魂の演技の賜物に他ならない。

ジャンキーたちの映画といえば真っ先に出てくるのが『トレインスポッティング』。だが私はこの作品がとても苦手。もしドラッグを扱った映画で好きな作品は?と聞かれたならば今度からは間違いなく本作の名を一番に挙げることにしよう。
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