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真夜中のピアニストのSのレビュー・感想・評価

真夜中のピアニスト(2005年製作の映画)
3.5
ジャック・オディアール監督による、裏社会の不動産ブローカーでありながらピアニストを目指し始めた青年の葛藤や苦悩を描いたノワール。セザール賞など受賞した作品。

不動産の裏ブローカーとして、暴力や裏切りが横行する世界に生きる主人公の心には、母のようなピアニストになりたいという夢が眠っていた。そしてある日、彼は昔の恩師に再会、オーディションを受けてみるよう勧められる。夢を諦めきれずにいたトムは、その言葉で再び鍵盤に向かう決意を固めるが…。

主人公のピアノの個人レッスンをするのが、フランス語も話せない中国出身の女流ピアニスト。ロマン・デュリスと彼女が言葉ではなく、ピアノの練習を介して、コミュニケーションを深めていく映画的な魅力がある。

多様な人種が暮らすパリのさまざまな地域が舞台となり、最新作『パリ13区』との共通も見ることができる作品。
オディアール監督の巧みで堅実な演出によって描かれる裏社会の人間の葛藤と闘争、鮮血の赤で染まる映像美はフランス正統派ノワールの印象。

音楽を愛する繊細さな心と、狂気の間で葛藤する主人公をロマン・デュリスが熱演。実際に、ピアノを弾く姿を映すカットもあり本作の為に姉に教わり練習を積んだという。

公開当時に劇場で鑑賞した好きな映画の一つ『サム・サフィ』(1992)で大胆なヒロインを演じたオーレ・アッティカが、ブローカー仲間の妻役として出演。久々にその姿を見れたのが嬉しかった。

2022/05/16 DVD
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