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ミラノの奇蹟のkayupanのレビュー・感想・評価

ミラノの奇蹟(1951年製作の映画)
5.0
畑の捨て子で老婆に拾われるも、育ての母としての老婆は死去、孤児院を出て仕事はなくホームレスの住まう集落へ。救われないハードな人生ではあるが、曇りのないポジティブさと、憐みと施しの精神で、ホームレスを率い村を形成する。土地は無論持ち主が現れ、村を立ち退かせようとする。天国から育ての母が授けた奇蹟のハトの力で、資本主義的な権力に抵抗する。
老婆の死やヒロインへの愛情など、言語なしで、映像の結果として魅せる技術はまさに言語としての映画。戦後イタリアの貧困層を描くネオレアリスモとしての生の肯定は、共産主義以外の資本主義への抵抗の一つの回答ではないか。集団を率いる主人公の牧人性、天使、石像の人間化、空飛ぶほうきなど、キリスト教や古典的な寓話のモチーフが現代へ置換し参照され、イタリア・ヨーロッパ的文化を現していて、人間史の映像表現とされている点が素晴らしい。
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