このレビューはネタバレを含みます
大好きな多様(変)な顔に満足。資産家モッビの恰幅の良い風貌や愛の始まりが水浸しだったり、月を欲しがったり、素晴らしき哉、人生!に多分に影響与えていそう。100リラで聞こえの良い占い結果を使い回す占い師もアマルコルドで見た気がするんだけど…忘れてしまった。貧困を描いていながらも貧しさに打ちひしがれることなく、それを歌と笑顔で跳ね除けるトトに導かれる人々。赤ちゃんはキャベツ畑の妖精から授かり、石油という泉が湧き、煙の海を割って道を作り、箒に跨り天国へ向かって出発する。イタリアらしい暗いテーマなのに牧歌的で楽天的な神話が非常に楽しい。映像は画面の人の動きは奥行きを感じさせるし、街を彷徨うトトはリュミエールを思い出すような画作り。モッビの背後に怪しげな影を差す銅像、窓から兵隊を見送る俯瞰の構図は素晴らしい。芸術性や大衆性だけじゃなく合成という実験性も持ち合わせていた。幾らファンタジーと言えども地上に楽園は無いというのはネオリアリズモ。